53丁目のシルバーファクトリー

2018
ヴィデオインスタレーション
3台のプロジェクター、3つのメディアプレーヤー、アルミホイル、三脚、電光掲示板、銀のごみ箱
サイズ可変

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ニューヨークはグリッド状に道が張り巡らされ、横に走る通りはストリート(○丁目)、縦に走る通りはアヴェニュー(○番街)と呼ばれている。
人々は、この縦横の通りが交わる交差点から地図上のだいたいの位置を把握することができる。

53丁目にはニューヨーク近代美術館(MoMA)を挟んで2つのシルバーファクトリーがある。

53丁目5番街の交差点にはユニクロのフラッグショップがある。 
ユニクロは近年MoMAの公式スポンサーである。
ユニクロの店内では、銀色の壁に商品が反復して陳列され、アンディ・ウォーホルの肖像が広告のポスターに使われていた。
ウォーホルは言うまでもなくニューヨークのアート史における重要人物のひとりである。
ポスターには「シルバーファクトリー」というキャッチコピーがついていた。
おそらくユニクロはウォーホルの「ファクトリー」を彼らのブランドイメージ作りのために参照し、そのコンセプトを店舗のインテリアデザインに応用したのだろう。
世界中のユニクロの店舗でも、同じように商品が陳列されているのだろうか。

53丁目6番街の交差点にはグーグルマップにも載るくらい人気のハラルフードの屋台がある。
この屋台ではケバブを売っていて、ケバブはアルミホイルに包まれていた。
私はくしゃくしゃになったアルミホイルが道を歩く人々のすぐそばで舞っているのを見つけた。
銀色のアルミホイルを路上に放出する屋台は別の形でのシルバーファクトリーだ。
世界のさまざまな路上では、ケバブや色々な食べ物がアルミホイルに包まれて売られている。

ところで、この屋台がある交差点には、ウォーホルが活躍していた60年代にひとりのミュージシャンが毎日立っていた。
彼はムーンドッグと名乗り、バイキングの衣装を身にまとって、いつもこの角に立って、演奏をしたり詩を売ったりしていた。

『53丁目のシルバーファクトリー』はこれら2つの交差点の間にあるアートと音楽の歴史からインスピレーションをうけたヴィデオインスタレーションである。展示空間には、3つの映像作品、壁や柱をおおうアルミホイル、電光掲示板が配置されている。